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掏摸

 

掏摸(スリ) (河出文庫)

掏摸(スリ) (河出文庫)

 

 f:id:ponsan:20140222194518g:plainあらすじ

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は『最悪』の男と再会する。男の名は木崎。かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから3つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とは何か、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして社会から外れた人々の切なる祈りとは・・・。

f:id:ponsan:20140222194518g:plain感じたこと

 p120からのある貴族の話が印象的だった。手に入れたものは全て手に入れ、様々な女を毎日のように抱き、権力、名声、全てを手に入れた人間は何を欲するのか。人間の欲がなくなることはない。この貴族は、ある一人の人間の運命を決定することで最高の喜びを感じた。という狂った話なのだけれど、あらゆる欲が満たされると他人の支配欲というのも生まれるのだろうと感じた。木崎は、天才スリ師を支配しようと動くのだけれど・・・。残酷な運命の中で生きる個人の抵抗を書いた小説になっている。

f:id:ponsan:20140222194518g:plain学んだこと・心に響いた言葉

①宗教に目を向けてみるといい。ヤーヴェに従ったイスラエル人がなぜヤーヴェを恐れたか。その神に、力があったからだよ。神を信じる人間は、多かれ少なかれ神を恐れている。なぜなら、神に力があるからだ。

②破滅にはいつも、つまらない形がある。つまらない現実の形がついてくる。

③この人生において最も正しい生き方は、苦痛と喜びを使い分けることだ。全ては、この世界から与えられる刺激に過ぎない。

f:id:ponsan:20140222194518g:plain感謝

著者の中村文則様へ

執筆お疲れ様です。また、ありがとうございました。自分自身が絶望的な状況に追い込まれた時にまた読んでみたいと思わされる一冊でした。